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血液透析では、腕の血管から血液を採取し、ダイアライザ(透析器)に循環させてきれいにした後、体内に戻します。このとき、血液中の老廃物や尿毒素を効率よく取り除くためには、1分間に150~300mLという大量の血液を採取する必要があります。元々の血管を流れる血液だけでは十分な血液流量を確保できないため、手術によって動脈と静脈をつなぎ合わせて血管を太くします。これを内シャントと言います。手術後2~4週ほど経過し、内シャントが使えるようになってから血液透析を開始することになります。
※急激に腎臓の機能が低下し緊急的に血液透析を行う際には、シャントを作成している時間がないので別の方法で行いますが、それについては割愛させていただきます。
▼血液透析のイメージ図▼
▼シャントのイメージ図▼
血液透析導入後は週3回ほど通院し、1回4~5時間の血液透析を受けることになります。食事や飲水の制限が多かったり、旅行や出張の際に通院透析施設を確保する必要があったり、生活の制約は多くなりますが、通院回数が多い分、医学的ケアが常に提供されるというメリットもあります。また、日本では最も多くの方(腎代替療法を受けられている方の95%以上)が選択されており、実績のある腎代替療法になります。
腹膜透析では、腹腔内(お腹の中)にあらかじめ埋め込んだカテーテルという管を通して透析液を注入します。注入後、一定時間そのままにしておくことで、血液中の老廃物や不要な尿毒素、電解質、余分な水分などが、次第に腹膜(お腹の中にある膜)を通過して透析液の中に移動し血液がきれいになります。一方で、腹腔内に注入した透析液が老廃物などで汚れてくると、血液中の老廃物などは透析液に移動しにくくなってきます。そのため、定期的に腹腔内の透析液を交換することが必要になります。腹膜透析を始めるための準備として、透析液の出し入れを行うためのカテーテルを手術によって腹腔内に埋め込むことが必要となります。
▼腹膜透析のイメージ図▼
腹膜透析は血液透析と異なり、通院しなくても本人や家族が自宅や職場で透析液の交換を行うことができますので、通院頻度は月に1~2回程度となります。腹膜透析にも大きく分けて2つの方法があり、1日中腹腔内に透析液を溜めておき、1日に3~5回、生活リズムに合わせて交換する方法もあれば、腹腔内に透析液を溜める時間を夜間眠っている間のみとし、その間の透析液の交換を機械に任せる方法もあります。旅行や出張の際には透析液や透析装置の準備が必要となりますが、血液透析と比較すると、食事や飲水の制限など生活の制約は少なく、自由度が高いのが特徴です。
腎移植では、手術により他人の体から片側の腎臓を取り出して、末期腎不全の方の体内に移植します。このとき、腎臓を提供する側をドナー、提供を受ける側をレシピエントといいます。以前は、拒絶反応を抑えるために、レシピエントとドナーの遺伝子の型が一致する必要があり、移植に適したドナーを探すのに苦労していた印象がありますが、医学の進歩により、現在は遺伝子の型が合っていなくても移植を行うことが可能となっています。ただし、レシピエントとドナーの遺伝子の型が合致していたか否かに関係なく、移植後は少なからず拒絶反応のリスクがありますので、これを最小限に抑えるために免疫抑制剤の服用を続ける必要があります。また、腎移植を行うためには手術に耐えられる健康状態が必要なため、高齢の方では実施が難しく、実際のところ、70歳ぐらいまでが限度とされていることが多いようです。
▼腎臓移植のイメージ図▼
移植後1年程度経過すると、通院頻度は月に1回程度に抑えられるようになることが多いようです。生活面においては、食事や飲水の制限が少ない他、旅行や出張に自由に行くことができるなど、ほとんど制約を受けないというメリットがあります。
▼表にまとめてみました▼
いかがでしたか?
腎代替療法について、おおまかにはお伝えすることができたのではないでしょうか?
他にも色々と腎代替療法間で違いはあるのですが、残念ながら、このコラム内に収めることができませんでした。より詳細な情報をお求めの方は、当薬局にご相談いただければ幸いです。
前回・今回と、腎臓病がある程度進行した場合に限定した治療についての話で、ちょっと難しく感じた方もいらっしゃると思います。次回は少し気楽に読める内容、腎臓病のどのステージにも共通する内容として、「食事療法」について紹介したいと思います!
それでは、また!!