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さて、前回の予告通り、今回は「腎代替療法」についてです。
慢性腎臓病(CKD)が進行し末期腎不全(CKDステージ5)となってしまった場合、腎臓の機能を回復することは難しく、薬の力だけでは尿毒症、高カリウム血症、心不全などの重大な問題を回避することができなくなってしまいます。そこで行われるのが今回のテーマである「腎代替療法」です。文字通り、腎臓の肩代わりをする治療法ということになります。
腎代替療法にはいくつか種類があるのですが、万一、腎代替療法が必要になったときには、数ある治療法の中からご自身に合った治療法を判断し、選択することが求められます。このとき、それぞれの治療法についてよく理解した上で、医学的なことだけでなく、生活スタイル、年齢なども考慮することが必要となります。その選択基準、価値観は人それぞれですので、個人が最良の選択を行うことができるよう、情報発信を行うことで我々もお手伝いができればと思っています。
そのような思いから、腎代替療法の基礎と実用について、2回に分けて説明させていただきたいと思います。ということで、今回は基礎編です。
腎代替療法は大きく2つ、腎臓に代わって人工的に体内の余分な水分、ミネラル、老廃物などを取り除く透析療法と、腎臓そのものを他人の体から移植し、腎臓のはたらきをほぼすべて肩代わりする腎移植に分けることができます。
透析療法には、体内から取り出した血液を透析器(ダイアライザー)に通しきれいにして体内に戻す血液透析と、お腹の中にカテーテルという管を入れ、それを通して透析液を出し入れすることにより体内の老廃物を取り除く腹膜透析の2種類があります(詳細は次回のコラムで説明いたします)。
腎移植には、存命中の家族・配偶者・身内から腎臓の提供を受ける生体腎移植と、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける献腎移植があります。

透析療法では、腎臓に代わって体内の余分な水分や老廃物の除去を行います(中には除去しきれない老廃物もあります)。腎臓は水分や老廃物の除去だけでなく、ホルモンの合成など様々なはらたきも担う臓器ですので、透析療法を行っても腎臓のはたらきのすべてを補うことができるわけではありませんが、この部分は飲み薬や注射薬によって補うことができます。
腎移植では正常にはたらく腎臓そのものを移植しますので、腎臓が担う様々なはたらきをほぼすべて補うことが可能です。従って、腎臓のはたらきを補うための薬はほぼ不要となります。一方で、他人の腎臓を移植することにより体内で拒絶反応※と呼ばれる反応が起きた場合、移植した腎臓の機能が損なわれてしまうことがあります。これを抑えるために、免疫抑制剤というタイプのお薬が必要となります。
※我々人間には、自分の体(自己)を守るため、元々体内にないもの(非自己)が体内に侵入した場合にこれを攻撃する防御システム、いわゆる、免疫機能が備わっています(ここではたらくのが免疫細胞です)。
例えば風邪を引いたときに熱が出たり咳が出たりするのは、体の外から侵入したウイルスや細菌などの病原体(非自己)から自己を守ろうと、体内の免疫機能がはたらいた結果ということになります。
腎臓を移植した際も同様のことが起きます。移植された腎臓は元々体内にないもの(非自己)ですので、免疫機能がこれに攻撃を仕掛けてしまうのです。この移植した臓器に対して起こる免疫反応を拒絶反応といいます。拒絶反応が起こると、せっかく移植した腎臓の機能が損なわれてしまうこともありますので、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤という分類のお薬を服用し続けることが必要になります。

☆末期腎不全では、腎臓の肩代わりをする腎代替療法が行われる。
☆腎代替療法には、透析療法(血液透析、腹膜透析)と腎移植(生体腎移植、献腎移植)がある。
☆透析療法では、腎臓のはたらきのすべてを補うことができないため、不十分な部分は薬で補う必要がある。
☆腎移植では、腎臓のはたらきをほぼすべて補うことができるが、拒絶反応を起こさないために免疫抑制剤を服用する必要がある。
いかがでしたか?
今回は基礎編として、腎代替療法とは何たるか、また、それにはどのような種類があるのかを説明させていただきました。
次回は実用編として、腎代替療法を開始するために必要となる準備や、導入後の生活について、より詳細に説明させていただきたいと思います!
前回のコラムでも触れましたが、私が勤めている"やまうち薬局相生町店"では、「血液透析」を受けている患者さんの処方箋を多く応需しています。「血液透析」について、より詳細な情報をお求めの方は、やまうち薬局相生町店の薬剤師にご相談頂ければと思います。
それでは、また来月!!