
こんにちは、やまうち薬局の吉田です。第3回は糖尿病の治療薬についてです。
糖尿病治療薬には、インスリンを始めとする注射薬と内服薬があります。特に内服薬は沢山の種類があり、2型糖尿病治療には欠かすことができないものです。今回は2型糖尿病治療にフォーカスし、内服薬を中心に解説していきたいと思います。
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こんにちは、やまうち薬局の吉田です。第3回は糖尿病の治療薬についてです。
糖尿病治療薬には、インスリンを始めとする注射薬と内服薬があります。特に内服薬は沢山の種類があり、2型糖尿病治療には欠かすことができないものです。今回は2型糖尿病治療にフォーカスし、内服薬を中心に解説していきたいと思います。
今回の内容
1 糖尿病薬の分類
2 糖尿病解説①
3 まとめ
糖尿病治療薬は、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
コラム①の振り返りになりますが、糖尿病の原因にインスリン抵抗性とインスリン分泌障害の2つがあります。(コラム①はこちら)
この2つの原因に対してインスリン抵抗姓改善タイプとインスリン分泌促進タイプの治療薬が開発されました。糖吸収・排泄調整タイプは、インスリンの機能に関わらず、そもそも糖を体内に吸収させない、又はどんどん排泄することで血糖値の上昇を回避しようと開発された薬です。これらの薬を皆さんの糖尿病のタイプや進行具合に応じて使い分けて治療していきます。

ではここからいよいよ糖尿病薬のお話です。今回は、①インスリン抵抗性改善薬について解説します。インスリン抵抗性改善タイプには、ビグアナイド系治療薬と、チアゾリジン誘導体薬の2つがあります。
・メトグルコ(メトホルミン)
・ジベトス(ブホルミン)
ビグアナイド系治療薬は歴史が古く、1950年代には発売されていた医薬品になります。70年も昔の薬ときいて驚くかもしれませんが、これだけの年月使い続けられている理由がちゃんとあります。
主に肝臓からの糖新生(※1)を抑制して糖が血中に放出されることを防ぎます。更に小腸での糖吸収を抑制したり、筋肉や脂肪組織で糖の利用を促進したり、様々な機序で効果を発揮します。インスリンを分泌させる効果がないので、肥満を起こしにくく、低血糖にもなりにくいという特徴があります。
価格も1錠あたり約10円(1割負担なら1円)と安価で効果も良いことから、糖尿病治療の第一選択薬として利用されることが多い医薬品です。
この他にも、老化やがん抑制の研究がされていたりと、様々な効果が期待されていることでも知られています。
※1 糖新生:肝臓や筋肉に蓄えたグリコーゲンという糖を分解してブドウ糖を生成すること。グリコーゲンについてはコラム②のブドウ糖の役割と摂取をご参考になさってください。(コラム②はこちら)
特徴だけ見れば万能薬のように見えるかもしれませんが、注意すべきことももちろんあります。
薬の服用開始時期に起きやすい症状として、腹痛、下痢、食欲不振などの消化器症状があります。この症状は、少量から開始することで殆どの場合は回避できますが、少量から開始しても訴えを起こす方がまれにいらっしゃいます。このような場合は服用することができません。
また、もっとも注意しなければならない副作用に、乳酸アシドーシスがあります。乳酸アシドーシスとは、血液中の乳酸が異常に増えてしまった結果、血液が酸性になった状態を言います。
乳酸アシドーシスの初期症状として、強い胃腸症状(吐き気・嘔吐、下痢、腹痛)や倦怠感、筋肉痛などの症状があります。症状を放置すると、呼吸苦、昏睡といった症状を発症することがあります。
乳酸アシドーシス自体は年間で10万人に3〜10人(0.003~0.01%)と、ごくごく稀な副作用ですが、重症に至ると危険な副作用のため、上記のような症状が出た場合は直ちに医療機関へ受診することが大切です。
ここからが最も大切なポイントですが、乳酸アシドーシスは予防できる副作用です。乳酸アシドーシスは、特に腎臓に病気のある方や脱水状態を起こしている方に起こりやすいことが知られています。つまり、脱水のリスクに備えさえすれば安全に使用できる薬と言えます。
脱水は、夏場の熱中症や感染症に罹患した場合だけでなく、アルコール摂取をした際などにも起こります。そこで、このような状況下では適度な水分補給をしていただくことが、副作用の発生予防に繋がります。特にインフルエンザや急性胃腸炎のような感染症にかかり食事がままならない場合は服薬自体を中止することもあります。その際はかかりつけの医師や薬剤師に相談するようお願いいたします。
他にも、薬の飲み合わせとして「ヨード造影剤」を使った検査を受ける場合、休薬する必要があります。ヨード造影剤は腎臓に少し負担がかかることが知られており、結果、乳酸アシドーシスが起こりやすくなるためです。「造影検査をするよ」、と言われた際には必ずビグアナイド系薬を服用である旨を伝えるようにしてくださいね。

・アクトス(ピオグリタゾン)
チアゾリジン誘導体薬はインスリン抵抗性を改善することで血糖を下げる効果があります。よって、インスリン抵抗性の関与がある糖尿病を患っている方には効果が高いです。単体では低血糖も起こしにくく、1日1回の服用で良いことから服用しやすい薬です。
糖尿病の第一選択薬として選ばれることはありませんが、ビグアナイド系治療薬などが使えない患者さんなどには有効とされています。
主な副作用として、体液の貯留がみられる方がいらっしゃいます。体液の貯留は心臓に負担をかけるため、心不全の病気をされている方には使用しません。(一概に、体液貯留=心臓が悪いという意味ではありません)
また、稀に肝機能の数値を上げることがあるので、服用中の方は定期的に肝機能検査(採血)をおこないます。
薬にお詳しい方は、2011年の海外の文献で「アクトスと膀胱がん」についてのニュースを覚えてる方もいらっしゃるのではないでしょうか。当時は大きく話題になり、服用されている多くの方が不安を感じて薬を中止することがありました。しかし、その後の研究ではアクトスと膀胱がんの因果関係は否定されています。今でも唯一のチアゾリジン誘導体治療薬として活躍しています。
今回は、糖尿病薬のタイプとインスリン抵抗性改善タイプの2種類について解説してきました。いかがだったでしょうか。
次回はインスリン分泌促進タイプ、糖吸収・排泄調整タイプについて解説していきます。その際には「低血糖」についても触れていきたいと思います。
それではまた。