こんにちは、やまうち薬局の吉田です。
昨年は高血圧についてコラムを書いてきましたが、今回からは心機一転、「糖尿病」について解説していきたいと思います。
昨年、Instagramでも世界糖尿病デーに触れさせていただきましたが、糖尿病はありふれた病気になっています。(世界糖尿病Dayについて、やまうち薬局Instagram投稿はこちら)
5〜6人に1人が糖尿病と言われている昨今、皆様の周りにも糖尿病治療をされている方がいらっしゃるかもしれません。とはいえ、糖尿病は昔からある病気でもあります。
例えば、あの夏目漱石、遡って徳川家康や織田信長、更に藤原道長まで、過去の偉人達も糖尿病に罹患していたと言われています。最も遡ると、古代エジプト時代には既に糖尿病があったとか。過去の偉人を糖尿病の切り口で語るというのも面白そうではありますが、それはまた別の機会にとっておいて、まずは糖尿病そのものについて詳しくお話していけたらと思っています。
今回は、以下の2つに絞ってお話をします。具体的な治療・予防なども、今後公開を予定しています。
1 糖尿病とはどんな病気?
-糖尿病とインスリン
-糖尿病の分類
2 糖尿病になるとどんなリスクがあるの?
-糖尿病の症状
-合併症
-その他の合併症
では、いってみましょう!

1 糖尿病とはどんな病気?
糖尿病とインスリン
糖尿病とは、体の中のインスリンというホルモンの働きが悪くなることで、血糖値が高くなる病気です。
インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる役割があります。食事をとって血糖値が上がると、膵臓はインスリンを分泌し、糖を細胞内に取り込むことで血糖値が高くなりすぎないように働きます。よって、このインスリンの働きが悪くなると血液中の糖分が減らず、高血糖状態が続いてしまいます。
インスリンの働きが悪くなるパターンは、大きく2つあります。
①インスリン分泌障害
②インスリン抵抗性
①は、膵臓からのインスリン分泌が出ない、または出にくくなることで起こります。インスリンが全く出ない方は、注射によるインスリン投与が必要となります。
②は、インスリンは分泌されているにも関わらず、効きにくくなってしまっている状態です。このインスリン抵抗性を引き起こす主な原因として、内臓脂肪の肥満があると言われています。
糖尿病の分類
糖尿病はその成因により大きく2つに分類されています。
①1型糖尿病
②2型糖尿病
(中には、必ずしもこの分類に当てはまらない方もいらっしゃいます)
1型とは、膵臓が何らかの原因で破壊され、インスリンが完全に分泌できない状態を指します。例えば自己免疫疾患や、突発性の病気が原因で発症することがあります。発症も突然な場合が多く、まさか、という形で発症される方も少なく有りません。始めのうちはインスリン分泌機能が残っていても、徐々にインスリン投与が必要になるケースが多いとされています。
2型とは、前述したインスリン抵抗性が原因で起こる糖尿病です。主に生活習慣や遺伝因子から起こるケースが多いです。徐々に進行するため、初期段階では全く自覚症状がありません。しかし、2型はインスリンの効きが悪い分、血糖値を下げるためには一般的な方に比べてより多くのインスリンが必要となるため、相対的にインスリン不足に陥ります。よって、放置し重症化すれば生命維持のためにインスリン投与が必要になります。
糖尿病のうち、約95%が2型糖尿病、5%が1型糖尿病だと言われています。正確には、
③その他の特定機序、疾患によるもの
④妊娠糖尿病
といった分類もありますが、今回は文字数の関係上、割愛させていただきたいと思います。
2 糖尿病になるとどんなリスクがあるの?
高血糖の症状
高血糖状態が続くと、次のような症状が現れることがあります。
2型糖尿病の方は無症状のことも多く、血液検査から初めて気づくことがほとんどです。
また、1型糖尿病の方でインスリンが全く出ない方は、重度のインスリン不足になると、糖尿病ケトアシドーシスという状態になり、昏睡を引き起こすこともあります。
糖尿病の合併症
ここまでの説明ですと、「あれ、糖尿病ってそんなに大した病気ではないのでは?口が渇くくらいなら別に構わないかな。」と感じてしまうかもしれません。糖尿病が怖い理由は、次に説明する合併症があるからなのです。簡単に少しヒントをお伝えさせていただきますと、「糖尿病は血管内の糖の濃度が高い状態」だということです。
糖尿病の合併症は、いくつか、いえ、いくつもありますのでゴロ合わせにすると覚えやすいです。そのゴロは「しめじ」と「えのき」です。
し:神経 糖尿病性神経障害 →手足のしびれなど
め:眼 糖尿病性網膜症 →視力低下
じ:腎臓 糖尿病性腎症 →腎機能低下
この3つの合併症を糖尿病の三大合併症と言います。これらの共通点は、「細い血管」です。高血糖状態が続くと、血管は傷つき障害が生じてしまいます。それは、血管が細ければ細いほど早くその障害を受けます。神経・眼・腎臓は細小血管と呼ばれる細い血管が集まっているために、合併症が発症しやすいと言われています。
更に症状が進行することで起こる合併症として、次の3つがあります。
え:壊疽 →足の切断
の:脳血管障害 →脳梗塞など
き:虚血性心疾患 →狭心症、心筋梗塞など
細い血管がやられてしまい、今度はついに太い血管も障害されていきます。傷ついた血管はもろく、硬く、また血の巡りも悪くなり、足が壊疽する、心臓や脳の血管が詰まるといった症状を引き起こします。
ここまで来ると、残念ながら発症以前の状態に戻すことができません。
その他の合併症
この他にも、様々な合併症があると言われています。たとえば、以下のようなものがあります。
- アルツハイマー型認知症
- がん
- 骨粗鬆症、骨折
- 感染症(肺炎、尿路感染、皮膚感染など)
- 歯周病
- 勃起不全
など
繰り返しになりますが、糖尿病は血管を傷害する病気です。体には至るところに血管があるわけですから、今後も新しい合併症が発見されるかもしれません。ですから、糖尿病を悪化させない(=血管を傷つけない)ために、血糖値をコントロールしておく事が大切なのです。

まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、少し怖いお話になってしまったかもしれません。しかし、糖尿病で苦しんでいる方とたくさん関わってきた経験から、まだ治療の余地がある方にはどうか合併症を起こさずにお過ごしいただけたらという想いで解説させていただきました。次回は糖尿病の検査値について解説させていただきたいと考えています。また来月、コラムでお会いいたしましょう。
今日のまとめ
☆糖尿病はインスリンの働きが悪くなって起こる
☆糖尿病には大きく1型と2型の2パターンがある
☆糖尿病は血管を傷つけて合併症を起こす
☆主な合併症は「しめじ」と「えのき」
参考図書
糖尿病治療ガイド 文光堂
病気がみえる vol.3 メディックメディア