薬剤師をより身近に
お薬や健康について
相談できるパートナーとして

高血圧③ 高血圧薬の種類と特徴(前編)

  • Category: 血圧
  • 2022.09.23

yoshida.jpg

こんにちは。敬老の日は台風で残念な連休でしたが、近々実家(富士)に帰省しようと思っている吉田です。

rakuza.jpg

富士川楽座サービスエリアをご存知でしょうか?私の実家から車で5分。数年前に観覧車が出来たんですよね。写真は去年乗ったときのものですが、駿河湾から伊豆諸島、富士山もとってもきれいに見えました。高所恐怖症の妻も、視界が開けていて高さを感じにくく、「なんとか楽しめた。」そうです(笑)
余談ではありますが、標高が高いと人間の血圧も高くなると知られています。観覧車ほどの高さはまず問題ありませんが、富士山に登られるとしたら血圧はしっかりと管理しておきたいものですね。

降圧薬、どんな特徴があるかご存知ですか?

さて、今回のテーマは降圧薬の種類と特徴についてです。降圧薬と言っても本当にたくさんの医薬品があります。特に今はジェネリック医薬品や配合剤(2種類以上の医薬品成分がまざっているもの)も多く流通していますので、名前を覚えるにも一苦労だと思います。お恥ずかしながら、薬剤師の私ですら「あれ、あの薬の名前なんだっけ?」と思い出せないことがあります。(日々、勉強します・・・)

ちなみに、皆様は降圧薬を服用されていますでしょうか?服用されているとしましたら、今お使いの薬にどんな特徴があるかご存知ですか?ご存知であれば今回のブログは読み飛ばしていただいて結構ですし、もし少しでも関心をお持ちいただけましたら、どうぞお付き合いください。

先にお話したとおり、本当にたくさんの種類があります。そこで、今回は前編としてまず3種類、次回さらに3種類をお話したいと思います。

それでは、次の4つの構成でメジャーな降圧薬を紹介してまいります。


▷ 医薬品カテゴリー  
  ▽主な商品名    
  ▽特徴       
  ▽注意点  

▷ カルシウム拮抗薬

主な商品名(成分名)

・アダラート(ニフェジピン)
・コニール(ベニジピン)
・ニバジール(ニルバジピン)
・アムロジン(アムロジピン)
・カルブロック(アゼルニジピン)
 など

特徴

カルシウム拮抗薬は、おそらく最も聞き馴染みのある薬なのではないかなと思います。高血圧の第1選択薬として広く使用されています。

これまでのブログで「血圧は血管が収縮することで高くなるよ」とお伝えしてきました。その血管の収縮には、実はカルシウムイオンが大きな役割を担っています。血管の細胞にあるカルシウムチャネルという通り道にカルシウムイオンが入ってくると、血管は収縮します。


ここまでご説明すると、もしかしたら効果を想像できたかもしれません。そうです、カルシウム拮抗薬はカルシウムイオンが血管細胞にある通り道に入らないようにすることで血圧上昇を妨げています。

また、ただ血圧を下げるだけではなく、種類によっては狭心症や頻拍性の不整脈にも効果をしめすものがあります。心臓のご病気をもつ方にも、もしかしたら聞き覚えがある医薬品があるのではないかなと思います。
 
ここで1つお伝えしておきたいことがあります。カルシウムという言葉から、「カルシウム拮抗薬を飲んでいるから、カルシウムの多い牛乳が飲めない」と相談されたことが過去何度もあります。
ご安心ください!カルシウムを摂取することは血圧上昇に関係ありません。むしろカルシウムを控えてしまうと、体内のカルシウムが不足し、骨を溶かして血中のカルシウム濃度を増やそうとしてしまいます。その結果、かえって血圧が上昇してしまうことがあります。体の中って不思議です。食事はバランスよく!ですね。

milk.jpg

注意点

カルシウム拮抗薬の中にはグレープフルーツを始めとした一部の柑橘類との相性が良くないものがあります。グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分が、薬の分解を抑え、結果的に薬が効きすぎてしまうことがあります。 もし普段から好んでお召になる方は、一度薬剤師にご相談いただくことをおすすめします。
使用し始めに頭痛、ほてり、むくみなどの症状を感じることがあります。また、歯肉肥厚といって、歯肉が腫れるような症状が出ることもあります。歯の管理は予防の観点からも重要であり、かかりつけの歯医者さんには服用している旨を必ずお伝え下さい。

▷ アンジオテンシン変換酵素阻害薬

主な商品名(成分名)

・レニベース(エナラプリル)
・エースコール(テモカプリル)
・コバシル(ペリンドプリル)
・セタプリル(アラセプリル)
など

特徴

体の中には、アンジオテンシンⅡという血管を収縮させるためのホルモンが働いています。そのアンジオテンシンⅡはアンジオテンシン変換酵素という酵素が働いて合成されています。そこで、この酵素を阻害することで血圧が高くならないようにするのが、このアンジオテンシン変換酵素阻害薬です。とても長い名称なので、一般的にはACE(エース)阻害薬と呼ばれています。

高血圧治療としてだけでなく、心臓や腎臓を保護する作用を期待されて使用されています。

heath.jpg

注意点

妊婦・授乳婦に使用できないなど注意すべき点はありますが、比較的副作用の少ない系統になります。
その中で最も起こりやすい副作用といえば「空咳」です。もし症状がでた場合でも、速やかに中止すれば咳は治まります。咳が出ると聞くと辛くて嫌だなと思うかもしれませんが、悪いことばかりではありません。一例ではありますが、例えばこの副作用を利用して高齢の方の誤嚥防止を期待されて使用されることもあります。誤嚥とは、食べ物が気管に入り込むことです。もし誤嚥しそうになると、健康な方であればむせて吐き出すことが出来ますよね。それが難しい場合、この副作用を利用して反射をアシストしてあげる、という訳です。

極めて稀な事ですが、重篤な副作用として神経血管性浮腫というものがあります。喉がむくんで息苦しいなどの症状が出た場合は直ちにかかりつけ医・薬剤師にご連絡ください。

▷ アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)

主な商品名(成分名)

・アジルバ(アジルサルタン)
・オルメテック(オルメサルタン)
・ミカルディス(テルミサルタン)
・アバプロ(イルベサルタン)
・ブロプレス(カンデサルタン)
・ニューロタン(ロサルタン)
など

特徴

上の2成分の解説をお読みいただいた方には既に察しが付くかもしれません。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、アンジオテンシンⅡが作用する受容体にくっついて、アンジオテンシンⅡの働きを邪魔することで高血圧を防いでいます。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬という名称もながいので、ARB(エー アール ビー)とよばれています。
ACE阻害薬と同様、腎臓や心臓に対して保護作用が期待されて使われることが多いです。更に空咳がないため、更に使いやすい薬と位置づけられています。飲む回数もⅠ日Ⅰ回で済むため、継続して服用しやすいというメリットもあります。中でもアジルバという薬が非常によく処方されており、静岡県ではもちろん、全国医薬品売上ランキングでも上位に位置しています。
 

注意点

一般的に、副作用が少なく安全に使用されているカテゴリーになります。作用がACE阻害薬と近い所があり、双方が併用されることはありません。特徴も似ており、妊婦・授乳婦には使用できません。
副作用も血管性浮腫など共通点が多いです。他には、高カリウム血症(筋力低下、知覚異常、消化器症状など)や低血圧(ふらつきなど)にも注意して使用されます。

更に詳しく知りたい方は・・

今回は高血圧治療薬の中でも最も馴染みのある3種類(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB)を解説しました。いかがだったでしょうか。

薬の説明はどうしてもカナ文字や難しい単語の羅列になってしまいますね。私もどう表現したら分かりやすいか、いつも悩んでいます。

更に詳しく知りたいことがございましたら、遠慮なく弊社薬剤師にご相談くださいませ。

それではまた。最後までお付き合いいただきありがとうございました!