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高血圧②

  • Category: 血圧
  • 2022.08.19

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こんにちは。やまうち薬局の薬剤師、吉田萌生です。前回に続いて、今回も血圧についてお話したいと思います。

今日のテーマは「高血圧の基準と血圧の正しい測り方」についてです。次の5つのステップに分けて進めてまいります。

1 日本の高血圧患者数
2 高血圧が体に悪い理由
3 高血圧の基準値
4 あなたの適切な血圧数値は?
5 家庭での正しい血圧測定方法

1 日本の高血圧患者数

平成29年、厚生労働省が発表した高血圧性疾患の総患者数は993万7千人と発表されています。そのうち男性は431万3千人(43.3%)、女性は564万3千人(56.7%)となっています。総患者数とは、調査日現在において、継続的に医療を受けている方の数を推計したものになります。
静岡県の推定人口が約360万人なので、高血圧を患っている方は静岡県の人口の2.7倍以上もいる計算になります!
更に、令和元年国民健康・栄養調査の発表では、収縮期血圧が140mmHg以上の方の割合は男性で29.9%、女性24.9%と公表されています。つまり、医療を受けていない方を含めれば単純計算で男性約1,860万人、女性約1,628万人の方が高血圧だといえますね。
高血圧は痛くも痒くもありませんから、日々の忙しさや金銭的理由から治療をされない方が実際には多いのです。では、高血圧を放置した場合どのようなことが起こり得るのでしょうか?

2 高血圧が体に悪い理由

前回のコラムでは、「血圧とは血液が血管の壁を押す力のこと」と紹介させていただきましたね。(前回コラムリンクはこちら)これを踏まえると、「どうやら高血圧は血管の問題を引き起こしそうだな」と想像できるのではないでしょうか。

ご想像の通り、高血圧は血管疾患の最大の危険リスクです。具体的には、脳卒中・心筋梗塞といった病気を引き起こす原因になります。日本の死因第2位は心疾患、3位は脳血管疾患ですから、高血圧で居続けることは死亡リスクを高めているといえます。(ちなみに死因第1位は悪性新生物)

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高血圧による病気はこれだけではありません。血管は体の至るところに通っているわけですから、体のどこに問題が起きても不思議ではありません。特に血管の細い場所で病気を引き起こすリスクになります。たとえば、腎不全、肝障害、網膜症、足などの末梢動脈梗塞などがあります。

3 高血圧の基準値

2019年高血圧ガイドラインにおいて、高血圧の基準は次のように示されています。

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ご覧の通り、血圧には診察室血圧と家庭血圧があります。これは、いつ、どんな環境で血圧が高くなるのかが人によって様々だということが理由です。

例えば、病院など医療機関での血圧は高いにもかかわらず、ご自宅では正常血圧の方がいます。これを白衣高血圧と呼びます。その割合は高齢者に多く、高血圧患者の15−30%にその特徴があると言われています。
反対に、診察室では低いのに家庭では高い場合の仮面高血圧と呼ばれるタイプの方もいます。他にも、時間帯や睡眠時間、運動、妊娠などに様々な理由で変化することがあります。

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4 あなたにとっての適切な血圧数値とは?

2019年高血圧治療ガイドラインでは、降圧目標は次のように示されました。

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では、この目標値は誰しもに当てはまるのでしょうか?実は、それは違います。
例えば既に合併症を併発している方は、再発を防ぐためにより厳密な管理が求められます。反対に、低血圧を起こしてしまうリスクも考慮しなければなりません。年齢、病気、服薬能力、生活背景など様々な観点から個々の目標値が設定されるのです。あなたの体のことをよく知るかかりつけ医の判断を優先し、ご自身の血圧目標達成を目指してください。

5 家庭血圧の正しい測定方法

タイミング


先に述べたとおり、時間帯によって血圧が変わることが考えられます。その変化を把握するためにも、最低でも朝と晩の2回測定できると良いです。おすすめのタイミングは、それぞれ次のとおりです。

朝:起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、朝食前
晩:就寝前                   

これらのタイミングで、忘れず測定しやすいタイミングを選ばれるのが良いです。また、毎回測定するタイミングが異なると、正しく評価することができません。可能な限り同じタイミングでの測定をお願いします。

測定体位

座った姿勢で、1−2分安静を取ってから行います。測定部位は上腕で測定するものと、手首で測定するものがあります。それぞれの使用方法説明書をしっかりと確認の上、測定してください。私としては、上腕で測定するタイプを推奨します。その理由は、手首タイプの測定値は数値がばらつきやすく、特に手首の細い女性はその傾向があると言われているからです。もしこれからご購入される際は、意識してみてください。

記録方法

原則として2回測定し、そのどちらも記録をしてください。そして、2回の平均値をその時の血圧数値としてください。これは、多くの場合、1回目の血圧測定結果が高く示されることが多いからです。1回目が高くても低くても、2回測ることを習慣としてください。

記録結果の活用

せっかく記録してくださった血圧は、医療機関へお持ちください。家庭血圧は、その後の診療方針に繋がっていきます。

血圧手帳が必要でしたら、各店舗にて配布しております。次回来店の際、店舗スタッフまでお気軽にお申し出くださいね。

それでは、今回のまとめです。

高血圧は血管疾患の大きなリスク 

持病や年齢によって降圧の目標値が異なる          

血圧測定は毎回同じタイミング、同じ手技で行う

記録結果はかかりつけ医・かかりつけ薬局にシェアする 

以上、高血圧の基準と正しい測定方法について解説いたしました。
次回は、高血圧治療薬について解説してみたいと思います。それでは、次回もお楽しみに。最後までお読みいただきありがとうございました。

参考
高血圧治療ガイドライン2019
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf
厚生労働省 平成29年患者調査の概要より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/05.pdf
令和元年国民健康・栄養調査
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf