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腎臓②

  • Category: 腎臓
  • 2022.09.09

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皆様こんにちは。やまうち薬局の鈴木寛です。
今回は、前回の内容を踏まえ、「腎臓が弱った時に私たちの体に起こりうる症状」「そのまま放置した場合に起こりうること」について説明したいと思います。

まず、前回のおさらいですが、腎臓の「はたらき」は

・尿をつくる
・血圧を一定に保つ
・血液をつくるはたらきを助ける
・骨づくりを助ける

でしたね。
腎臓が弱った時、これらのはたらきが弱まると考えると、体の中でどのようなことが起きるかを理解しやすいと思います。

尿をつくるはたらきが弱まると、、、

体内に余分な水分がたまり、「むくみ」があらわれます。また、老廃物がたまることにより、「だるさ」「痒み」があらわれることがあります。

→そのまま放っておくと、、、

体内の水分が過剰になり、血圧が上昇し、心臓や腎臓に負担をかけることになります。また、老廃物の中には、尿毒症物質と呼ばれる物質が含まれていて、その蓄積は心臓、消化器、脳神経などにさまざまな障害を起こす可能性があります。

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血圧を一定に保つはたらきが弱まると、、、

血圧の調節がうまくいかなくなり、「血圧が高くなる」ことがあります(軽度の血圧上昇では自覚症状がないことも多いですが、血圧上昇の程度によっては、頭がぼんやりしたり、肩こりが起きたりすることもあります)。
また、血圧が高くなると腎臓の血管に負担がかかり、腎臓の機能がさらに低下し、血圧もさらに上昇するという悪循環に陥ります。

→そのまま放っておくと、、、

血圧が高い状態が続くと、腎臓以外の血管にも負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞などの病気にもかかりやすくなってしまいます(血圧コラム第2回より)

血液をつくるはたらきを助けるはたらきが弱まると、、、

血液(赤血球)を十分に作ることができなくなることにより、「貧血」を起こすことがあります(息が切れる、疲れやすい、顔色がよくない、などの症状があらわれることがあります)。

貧血と聞くと、赤血球づくりの材料である鉄分の不足をイメージする方も多いかと思いますが、鉄が足りていても、腎臓が弱り、赤血球をつくるはたらきが低下すると貧血になるのです。貧血は原因によってさまざまな種類に分類することができますが、腎臓が弱ることで起きるタイプの貧血を「腎性貧血」といいます。

→そのまま放っておくと、、、

最近、心臓腎臓貧血の間には密接な関係があり、貧血のある方は心不全や慢性腎臓病といった病気が悪化しやすいことが報告されています。貧血が長引くことで、心臓や腎臓を悪くしてしまう可能性が考えられます。

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骨づくりを助けるはたらきが弱まると、、、

カルシウムの吸収を助けるビタミンDを活性化できなくなることにより、カルシウム不足となり、骨づくりがうまくいかず、「骨がもろくなる」ことがあります。(背が縮んだり、腰や背中の痛みで動きにくくなったりすることもあります)。

→そのまま放っておくと、、、

骨に関係するホルモンのバランスが崩れ、その状態が長く続いた場合に、血管や心臓の弁が骨のように硬くなり(石灰化)、脳梗塞、心筋梗塞、心不全といった病気を起こしやすくなると言われています。

今回のポイント

いかがでしょうか?今回のポイントは、

腎臓が弱ると体にさまざまな不具合が生じる。

弱った腎臓を放っておくと、大きな病気につながりかねない。

の2点です。

腎臓は沈黙の臓器とも言われていて、上記の症状は腎臓がある程度弱った段階であらわれるものになります。もちろん、症状があらわれたら出来るだけ早く受診することが大切ですが、症状が出る前の、できるだけ早い段階からご自身の腎臓の状態を知って、悪化の予防に努めたいですよね。そのためにも定期的に検査を受けることが大事になります。

というわけで、次回は「検査で分かる腎臓のこと」について紹介していきたいと思います。

※最後に注意!※

今回述べてきた症状は、腎臓が弱ることであらわれる可能性のあるものですが、これらの症状が出たからと言って、必ずしも腎臓が弱っているとは限りませんのでご留意ください。たとえば、心臓のはたらきが低下した場合にも体がむくむことはありますし、塩分の過剰摂取から血圧が高くなることもあります。

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。